東京地方裁判所 昭和27年(ワ)9539号 判決
原告 山本秀雄
被告 株式会社玉屋丸友商店
一、主 文
一、被告は原告に対し金六十五万五千円を昭和二十八年一月十八日以降完済迄年六分の利息と共に支払う事を要する。
二、訴訟費用は被告の負担とする。
三、此の判決は仮に執行する事が出来る。
二、事 実
原告は主文第一、二項同旨の判決並に仮執行の宣言を求め、原因として、(一)原告は燐寸類の製造販売を業とする商人であり、被告も亦燐寸其の他荒物類の仕入販売等を業とする会社で昭和二十七年二月六日設立の登記を為したものであり、其の商号は初め株式会社丸支商店と称したが後之を現在の如く株式会社玉屋丸友商店と変更し、昭和二十七年四月九日其の旨の登記を為した。(二)右被告会社の設立登記前、被告会社の発起人たる訴外時田忠蔵、大木力等は右被告会社の旧商号を用い原告に対し燐寸の注文を為したので原告は被告会社が設立登記前である事を知らずして昭和二十六年四月十五日より同年八月十三日迄の間に現品汐留駅着払但し同駅迄の運賃は原告負担の約で合計金二百七万二千二百五十円に相当する燐寸類を売渡し之に対し合計金百四十一万七千二百五十円の内入弁済を受けたが残額金六十五万五千円の支払を受けないので被告に対し右金額及び之に対する訴状送達の翌日たる昭和二十八年一月十八日以降年六分の利息の支払を求めると陳述した。<立証省略>
被告は原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として(一)原因(一)の事実を認め、(二)原因(二)に記載された売買の事実は不知、(三)仮りに原告主張の如き売買があつたとしても右は被告の設立前の取引であるから被告に責任はないと陳述した。<立証省略>
三、理 由
一、証人時田忠蔵の証言及び同証言によつて成立を認め得られる甲第三号証乃至同第十五号証、同第十七号証乃至同第十九号証、成立に争のない甲第十六号証の一、二並に原告本人の供述、同供述によつて成立を認め得られる甲第二号証によれば被告会社の発起人であつた右証人時田忠蔵、同じく発起人であつた訴外大木力は被告会社の元商号であつた株式会社丸友商店名義を以て被告会社の設立登記前原告に対し燐寸類の取引を申込み原告主張の如く昭和二十六年四月十五日より同年八月十三日迄の間に原告より合計金二百七万二千二百五十円相当の燐寸類を買受け之に対し合計金百四十一万七千二百五十円相当の内入弁済を為し残額金六十五万五千円の未払代金が存する事、原告は被告会社の未登記である事を知らず被告会社は既に成立して居るものと誤認して本件取引を為した事を夫々認める事が出来る。証人飯塚正一及び乙号各証を以つては右認定を覆えすに足らない。
二、発起人等が会社の設立登記前、会社の商号を以つて為した行為は一般に無権代理又は事務管理であるが、其の商号を信頼して取引を為した善意の第三者に対しては会社は其の取引が目的の範囲に属する限り直接其の責に任ずべきものである。蓋し、会社の商号は会社の成立前発起人等によつて定められるものであるから発起人は会社の成立前会社の商号を用いて会社の目的たる営業を為した場合は会社は成立と同時に其の商号を譲受けたと言うよりは寧ろ自己の使用に対する事後許諾を与えたと同一の関係に立ち、従つて、商法第二十三条の類推適用を見るべきものだからである。本件取引が被告会社の目的たる営業に属する事は前記当事者間争のない事実によつて明かである。故に被告は本件売買残代金の支払の責に任ずべきものであり、此の点に関する被告の主張は失当である。
三、原告は本訴状が被告に送達せられた日の翌日たる昭和二十八年一月十八日以降年六分の利息の支払を求める事が出来る。故に原告の本訴請求は理由がある。
四、訴訟費用の裁判は民事訴訟法第八十九条、仮執行の宣言は同法第百九十六条による。
(裁判官 安武東一郎)